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関西書店見学&教育書勉強会
2月5・6日と、久々に関西方面の書店を見て回りました。


<恵文社 バンビオ店> 
http://www.keibunshakoutari.com/

サイトを見ただけの段階ではコミックに特化した店舗かと思っていたが、各ジャンルとも
恵文社らしい品揃えで、地元のお客様に愛されているだろうなという印象。
売れ筋は押さえつつ、店長や各担当者のマニアックなこだわりを、きちんと商売として
成立させている。
今回見た中では一番印象に残った。

店内は全て間接照明で、什器は全て木什器。平台に使われているアンティークの
机と共に、社長のこだわりとのこと。照明は暖色系で統一され、落ち着いた雰囲気。

文芸書~人文書は、売場はそれほど広くないがしっかりと選書され、タイムリーな
話題に合わせて展開されている。
著者直筆のサインなどもあり、著者や版元との繋がりをうまく売場に反映させている。

文庫は基本は版元別だが、所々にアクセントがあって、手にとって見たくなるような
工夫が随所に見られる。
ハヤカワ・東京創元は「ライトノベル読者が次に読むもの」を想定した展開と思われる。
水無月賞(京都の書店員有志で選ぶ文庫のための賞)のコーナーなど、面白い試み。
http://d.hatena.ne.jp/minaduki_taisho/

・目に付いたアイテム
角川ハルキ文庫 今野敏 『ボディーガード工藤兵悟シリーズ』
ジャイブ文庫 木地雅映子 『マイナークラブハウスへようこそ!』
光文社文庫 福田栄一 『ア・ハッピー・ラッキー・マン』

実用書の横がコミック売場になるが、よしながふみなど、普段コミックをあまり読まない
人でも手に取りそうな作家の作品が繋ぎとして並んでいた。

コミック売場は、店長や担当者の熱意がひしひしと伝わってくる「熱い」売場。
店長さんがかなりマニアックな知識を持っておられ、直接仕入れた同人誌を
数百冊という単位で売っている。
直筆のサインがコミック売場の至る所に飾られていた。他にも、新刊発売に
合わせオリジナルのペーパー(これも著者自筆)を作成している。
著者・出版社・そしてお客様との繋がりを強く感じる。

「音の鳴る絵本」についての注意書きも好感が持てた。ウチの店では子供の
させるがままになっていることが多く、手荒な扱いでよく壊される。
店の雰囲気を維持することにもなるので、これは取り入れたい。
*「他のお客様のご迷惑となりますので、長時間の使用はご遠慮下さい」といった内容

恵文社というとすぐにセレクトショップ然とした一条寺店が思い浮かぶ。しかし
我々としては、商業施設のテナントとして、限られた売場の中で「今売れている
もの」と「店として売りたいもの」のバランスが取れているバンビオ店の方が、
見習う点が多い。


<三省堂京都駅店>
駅地下にあり、通勤客及び観光客がメインと思われる。・手前入口に新刊・話題書・
各ジャンルのランキングコーナーがあり、短い滞在時間で本を買ってもらう工夫が
してある。文芸書はしっかり選書してあり、ポップも数はそれほど多くなかったが、
ちゃんと読んで書いていると思われる内容。

目に付いたアイテム
祥伝社文庫 高瀬美恵 『庭師』がワゴンで仕掛け販売


<アセンス心斎橋店> 
http://www.athens.co.jp/

開店して24年目。5階がギャラリーで4階が美術・建築・3階がビジネス・資格など・
2階が文庫・新書・文芸、1階が雑誌・ベストセラーや話題書という売場。
5階のギャラリー及び4階美術書売場は、アートディレクターとして専任スタッフが
1人いる。海外とのやり取りや直取引が多いため、その方が仕事がやりやすい。
(BGMも4階だけ別だった)

多層階売場のため、4、5階は別としても2、3階売場への誘導が中々難しいとのこと。
文庫売場で、担当者が企画した「泣ける本」フェアを展開中。
「お客様の大切な1冊がランキングに反映されます!」というコメントがあり、お客様と
一緒に売場を作っていこうという熱意が感じられた。
階段の踊り場で「チェコ・東欧フェア」があったり、階段の段差を利用した什器で
BNコーナーがあったりと、それほど広くない売場をうまく利用していた。


<スタンダードブックストア> 心斎橋 1階及び及び地下1階(カフェ併設)
http://www.standardbookstore.com/

関西を中心にチェーン展開している「鉢の木」という書店の、アンテナショップ的な
位置付けか。
大阪の中心街という立地もあり、ファッションに特化した売場作り。
全体的な印象は、本のセレクトはヴィレッジヴァンガード的。つまり「カウンター
カルチャー以降」の視点で各ジャンルが構成されている。
既刊を売っていこうという姿勢が見える点も類似。

入口にハイファッション雑誌が男女別に分かれて面陳。その流れで洋雑誌・Penや
スタジオボイスなどのカルチャー寄りの雑誌が並ぶ。ファッション・アート系の洋書も
かなり専門的な品揃え。

英米文学であればビートジェネレーション~P.オースター、ヴォネガットなど。
日本文学は寺山修司~筒井康隆~春樹・龍~町田康など。ノンフィクションは
ゲバラ・ヤクザ・ドラッグ関連。
実用書に関してもベタな感じではなく、ヨガ・ベジタリアン・スローライフといった
キーワードでジャンル分けされている。

あくまでもヴィレッジ~と違い本がメインだが、雑貨もかなりのスペースで展開。
1階が主に文具。地下1階は女性向けの雑貨が並ぶ。

<ランダムウォークブックス> 神戸
洋販倒産後、管財人の管理下にあったが、2月より個人で洋書専門店として
営業再開とのこと。神戸という立地に甘えず、しっかりとした品揃え。

<まとめ>
京都の書店員は、法人の垣根を越えて横の繋がりがあり、普段から情報交換を行っている。
(今回見た京都の2つの書店も、mixiで知合った書店員さんに教えて頂いた)
山陰だとまず書店の数が少ないので難しいかと思うが、その前にそもそも社内で
上手く情報が伝わっているかが、やはり疑問。


<教育書勉強会>

出版社から、教育現場の今後の流れ・教育書販売のポイントなどの説明後、各書店の
売場写真を見ながらディスカッション。
・キーワード・・・PISA型読解力・理数教育の充実・活用力など

ウチの店への指摘は、下記の通り。
・心理学は教育書の流れで売場を作った方が良いのではないか。カウンセリングや
特別支援教育などとの親和性が高い。

・社会学・社会問題との連携も
ニート・格差社会など、教育問題に直結している話題も多い。タイムリーな売場を。

その他
・特別支援教育は、「ADHD・LDなどの障害を持つ児童を、通常学級でどう支援して
いくか」という取組み。つまり特別支援学校(旧・養護学校)に勤務する教師だけでなく、
教師全てに関わる取組み。春の教育書フェアでは、大きくアピールしても良いのでは
ないか。
・ジュンク堂では、新規オープンの際は取次にまかせるのではなく、専門の担当者が
全て選書・棚作りを行う。
・外商部門と上手く連携を取ること。外商部門がない書店でも、学校へ直接パンフレットを
持って挨拶に行くなど、地元へのアピールを。


<勉強会を踏まえて>
どの書店も、担当者の育成に頭を悩ませていた。売上占有率の大きいジャンルが
優先され、専門書はどうしても後回し・片手間になりがち。
だが、「本を比較的読む職業」として、教師という存在はやはり大きい。また口コミなどで
リピーターになってもらいやすい。
顧客をきちんと掴まえておくためにも、時期に合わせた売場展開を行わなければならない。
# by t_syng | 2009-02-11 00:10
人文会 東京合同研修会
先日東京で行われた、人文会の合同研修会、大変勉強になりました。
以下、まとめと感想など。

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<教養主義の没落と人文・社会科学> 特別講演 竹内洋(関西大学文学部教授)
・教養主義とは?・・・教養を身につけなければならないという姿勢、つまり
 旧制高校的な文化遺産であった。
 (例・・・1970年頃、パチンコの景品に岩波新書がありしかも人気アイテムであった。)

・日本では、大衆=群衆ではなくミドルクラス。大衆になりたい、教養を
 身につけたいという欲望を上手く掬い取ったのが、第一次新書ブームだった。

・高学歴ワーキングプアという問題
 大学が実績主義になったため、大学院生は論文を量産しなければならず、
 専門以外を勉強する時間的な余裕がなくなってしまった。結果、つまらない、
 瑣末な内容の本が溢れる。
 (例:ハイデッガーの著作の脚注についての論文)

 本来熱心な読み手であるべき大学院生が、書き手になっている。当然、
人文書マーケットが縮小し、「カラオケ化」とでも呼べる状況。
 つまり歌い手(書き手)ばかりが存在し、誰も聴いて(読んで)いない。

・人文・社会科学の現在と未来
 新大衆社会(=集愚社会)になるのか、新階級社会になるのか。

 大学生になってから本を読め、と言っても無理がある。中学・高校までに
 読書の習慣が身についていなければならない。朝読世代に希望を見出したい。

・3つの科学
 専門職のための科学(プロフェッショナル・サイエンス)
 政策のための科学(ポリシー・サイエンス)
 公論のための科学(パブリック・サイエンス)

 人文書のマーケットを維持するためには「公論のための科学」が重要。
 書き手が、借り物ではなく自らの言葉で読者に語りかける必要がある。


<人文会の40年と人文書の可能性>
1.筑摩書房 K氏
30年前、人文書の棚はほとんどの書店が版元別だった。書店を回って
棚作りを行い、ジャンル毎に並べることがやっと定着した。

2.ジュンク堂 F氏
本の売れ方が変わった。新人類以降もしくは共通一次世代以降という見立てを
している。
大学の法人化が、文系理系関係なく学問の在り方を変えてしまった。産学協同という
名の下に、すぐに結果が求められるようになった。
『誰が本を殺すのか』での予想が外れたこと、それは紙の本が思ったほど売上が
落ちていない。「モノ」として、紙の本が圧倒的に優位であるため。

3.東大出版会 H氏
オルタナティブ・・・「もう一つ別の」可能性
現実と繋がりつつ、その現実に対して「違和感」を表明する。
そこに人文書の意義があるのではないか。

・日本におけるカルチュラル・スタディーズの受容・展開
96年にまず雑誌で特集が組まれ、その後90年代後半に基本となる書籍が刊行され、
徐々に売り場として説得力のあるものになっていった。今では思想・社会学の棚の
主要な柱となっている。
特にジュンク堂池袋書店での和・洋書織り交ぜた棚での展開は、研究者の間でも
話題を呼んだ。これは、売り場で働く書店人と出版社の営業担当者との共同作業で
作り上げたものである。

・POSデータと現場との照合
ライバル店と比較する。展開の仕方に問題はないか(平積みか面陳か・棚差しか)
現場を知っているからこそデータが活きる。新刊は、過去のデータでは意味がない。

インターネットによる公共圏の可能性はあるのだろうか?現状では“否”であろう。
出版とは利益を目指すものであり、流通システムの中で淘汰され、良質なコンテンツを
生み出してきた。


<人文書販売の現在と未来>

1.紀伊国屋書店 Y氏
基幹店舗としてのプレッシャーを日々感じながら仕事をしている。
「しかるべき時に、しかるべき場所に」がモットー。
じんぶんや 月1回のペースで開催。自分の興味や話題の書き手・新刊発売に合わせて
展開。
http://www.kinokuniya.co.jp/04f/d03/tokyo/jinbunya/jinback.htm



販売部のパイプや版元のつてなども利用して選んで欲しい人に企画書を渡す。
コーナーとして定着・実績を積んでいるので、依頼される側も快く引き受けてくれることが
多い。
人文書売上の底上げになればと思い選書リストをHPに公開しているので、どんどん
利用してほしい。
普段来店される方だけでは広がりがなく売上も厳しいので、、宣伝・告知に力を入れている。

2.Aブックス S氏
身体論 スローライフ・ヨガなど、実用書と絡めてコーナー展開。 誠信書房の『音楽家なら
だれでも知っておきたい「呼吸」のこと』を500冊販売した。


<人文書の最前線~フリーディスカッション>

月曜社 K氏
本の編集/棚の編集/本を通じて本の外を編集する。そして今、街づくりは編集である。
本屋ではない場所に本棚を作る。ブックコーディネーターという「新しい職業」の誕生。
→江口宏志(ユトレヒト)・幅允孝(バッハ)・孝内沼晋太郎(numabooks)

今・今後注目すべきカテゴリーとして、アメリカ現代政治思想・イタリア現代思想及び
日本のゼロ年代(70年以降に生まれ、2000年以降に論壇に登場した)書き手たち。

筑摩 I氏
知り合いの編集者から「新書とは、新幹線で大阪まで行く間(≒約2時間)に読めるもの」
書下ろしから語り下ろしへ。
雑誌が売れなくなり、雑誌の編集者が新書に流れてきた。例えば新潮新書立上げ時、
8人中6人が元雑誌編集者だった。雑誌の特集記事的な内容が、1冊の新書になる。
初速で売行きが決まる。各社ともタイトルや帯のコピーが大げさになり、帯も4色印刷で
派手になる。売り場自体がケバケバしくなって、本も選びづらくなっているのではないか。

平凡社 I氏
「人文書」という言葉は、出版/書店業界の業界用語であるという認識を持つべきでは
ないか。
某私立大学生のアンケートより。
大学の授業などで読んでいるはずだが、あくまでも「教科書」という認識でそれらを
人文書だとは思っていない。知的な背伸びをしなくなった(「知らない」ということを
恥ずかしいと思わなくなった)。

東大出版会 Y氏
「人文書」という捉え方が、そもそも日本独自のものではないか。
欧米だと、日本の文庫に当たるペーパーバックがあり、日本の人文書に該当する内容だと
5000円以上の専門書になってしまい、3000円前後の書籍はほとんどない。
かつてなら5000部以上売れる内容のものが、3000部も売れない。当然価格設定に
反映されるので高くなってしまい、ますます売れなくなるという悪循環。

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<雑感>
各版元の担当者はもちろん、ベテランの方から現場で日々努力している若手書店人まで、
100名以上集まった今回の研修会は、大変勉強になりまた刺激を受けた。
ジュンク堂・丸善・紀伊國屋屋書店の、自分と同年代もしくはより若い人たちと話が
出来たことも収穫だった。
特に紀伊國屋書店の「じんぶんや」。テーマの設定、人選、選書のラインナップ、
そして売上(これ一番重要)、とにかくカッコイイとしか言いようがない。
しかも若くてかわいい女性が、基本的に一人でやっているという事実。
正直ちょっと凹みました・・・。

まだまだ出来ること、やるべきことがたくさんあることを痛感した。


・カルチュラル・スタディーズ(以下CS)の「書店での」展開について
CSの多様性・ジャンル横断性という要素は、人文書の商品特性そのもの。
そして、自分の興味に引き寄せて、様々な展開が可能になる。

例)ギルロイの『ブラック・アトランティック』(月曜社)を中心に音楽という括りで展開すると、

・河出書房新社 野田努 『ブラック・マシーン・ミュージック』(デトロイトテクノ。名著!)
・未来社 ヘブティジ『サブカルチャー』(パンク及びレゲエとの関係など)
・平凡社 『ラスタファリアンズ』(レゲエの歴史及びその宗教性)
・みすず書房 『ニグロ・スピリチュアル』(アメリカにおけるブラックミュージックの起源)
・プチグラ 『ワイルド・デイズ』(UKブリストル音楽シーンの写真集)
・インパクト出版会 『アンボス・ムンドス』『音の力』シリーズ
・毎日新聞社 平井玄 『引き裂かれた声 もうひとつの20世紀音楽史』
・メディア総合研究所 ECD『いるべき場所』
・B・インターアクションズ『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ 究極のDJ/クラブ・カルチャー史』
・B・インターアクションズ『ブラックパンサー エモリー・ダグラスの革命アート集』

など。
BGMはもちろん、ECDの「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ(Yeye Version)」。

・ネットでの公共圏は不可能か? (東大出版会 H氏の話を踏まえて)
オープンソースウェアの可能性を否定していないか。
自分自身がネットカルチャーに興味を持つようになったのは、翔泳社『ネットトラヴェラーズ』
の95年版及び96年版が出版されて以降だ。
「バリバリの文系」を自称していた音楽ライターの川崎和哉が、ネットの世界(特に
リナックスなどのオープンソースソフトウェアの世界)にシフトし、「何かが始まる」という
期待感に満ちたこの2冊を書き上げたことに衝撃を受けた。(どちらも絶版)

玉石混合は否めないが、既に良質なコンテンツが多く生まれている。「どうすれば
ネット上での公共圏は可能になるのか」を考えるべきではないだろうか。

・東京へ向かう道中、宮沢章夫の『東京大学「80年代地下文化論」講義』(白夜書房)を
読んだ。80年代、ニューアカ(リブロの今泉棚)を初め、様々なシーンで書店が果たした
役割は大きかったが、バブル前後で本が売れなくなった、というのが定説になっている。

ただ、人文書が売れなくなったとされている1989年以降が、自分が最も本を沢山読んだ
時期なので、「売れなくなった」「読まなくなった」という出版界の常識との折り合いが、
未だにうまくつかない。

・帰りの道中は内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫)を読了。
「なぜ書物というものは著者だけの遺産としてしか残されないのだろう。幻の出版社と
いえば聞こえはいいが、実は本を作った人間のことなどこの国の「文学史」は端から
覚えていないのではないか。」(P13より)

書いた人、作った人。「売った人」が文学史に登場するのはいつだろうか。
# by t_syng | 2008-10-28 00:58
book selector宣言
(桑原)茂一さんは当時、音楽を選曲するという先駆けでもあったんです。
いまは「DJ」っていうのが当たり前になってるけど、当時、選曲で商売が
成り立つなんていうことは、そんなになかったんですね。

宮沢章夫 『東京大学「80年代地下文化論」講義』(白夜書房)より

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「ふさわしい本を選ぶ」、たったそれだけ。
圧倒的に人口の少ない地方の書店でも、やれることは沢山あるはずだ。
# by t_syng | 2008-10-17 00:37
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